宮部みゆき『さよならの儀式』

読み終わった本の記録。

宮部作品の単行本が出ているのを存じ上げませんでした。すみません。初版2019年。大森望が主宰のSF短編集『NOVA』に収録されていたものを集めたものとのこと。

『聖痕』だけは読んだことがありました。

この作品すごく良いです! 久しぶりに宮部作品に触れたけど、やっぱり良い。おこがましいですが個人の感想です。

宮部さん、時代にあわせて文体も新しくなっている。とても読みやすい。昔の作品を読むと、けっこう地の文で「~ので」とかの助詞がある。そのためけっこう一文が長い。

一方、本作に収録されているものはほとんど、今の時代の作家と変わらないくらい、一文が短い。視点が安定していて、テンポが速い。(宮部さんの文章は、比喩の翼で視点がぶんぶん回るカメラワークが至高という面もあるのですが)

表題作『さよならの儀式』は、自分がかまえて読んだせいもあるけれど、やはり図抜けていると思う。これ、国語の教科書にそのまま掲載されるとか、大学受験の現代文に採用されるとかなっても、全然違和感が無いです。場面や情報が増えていく快感で走るエンタメなんだけど、それ以上にいろんな読み方ができる良い作品だと思った。

『母の法律』『戦闘員』『保安官の明日』は、それぞれ、新井素子的な・星新一的な・ハリウッドドラマ的な拠り所を感じる部分はありつつ、それをしみじみと読ませてくれる文と、ちょっとした怖さ・温かさが良いです。


  • 母の法律
  • 戦闘員
  • わたしとワタシ
  • さよならの儀式
  • 星に願いを
  • 聖痕
  • 海神かいじんすえ
  • 保安官の明日あす