奥田英朗『最悪』

読み終わった本の記録。

1999年2月 刊行。文庫2002年 第1刷、2015年 第40刷。

池上冬樹氏の「解説」がすごい熱意で書かれていたので言うことがない。

では具体的にどう凄いのか?
その前に、あるベストセラー作家の言葉から始めたい。
小説の敵は映画と漫画である。

出版不況がとうに始まっていた2000年前後の「ベストセラー作家」というくくりと、あとに続く文章も併せて、僕の記憶と認識が違わなければ、この言葉は宮部みゆき氏のもののはずなのである。いろいろ小説を読んできて、こういう結びつきを発見できると嬉しい。

読みながら既に宮部作品を想起しました。比較とか優劣とかではなく、ただ自分がよく読んでいたから。「群像劇」とサスペンスとミステリーというジャンルであり、なお“人を描く”部分の濃さが通じている。

大傑作でした。

3人がそれぞれ真綿で締められるような追い詰められ方は苦しいが、それを読ませるのは説得力と筆力の技だと思った。この十分な助走があるから、行動原理に納得できる。終盤の駆け抜け転がり衝突するスピードに、無理がぜんぜん無い。