宮部みゆき『過ぎ去りし王国の城』

そろそろ宮部先生、電子書籍への進出を検討していただけないでしょうか。だめですか。書店、取次、印刷、出版の大多数の生計をその両肩に背負っていることはなんとなくうすうす承知してはいるつもりではあるんですけれども…。これも久しぶりに紙の本で読みました。悔しかったんですよね、おもしろくて。買ってよかったと思わされてしまって。やっぱりかなわないなぁ。すごいなぁ。Amazon Prime Readingってあるんですよね。たくさん読めるんです。ただこの作品を読んでから、ごめんなさい本当に言葉が悪くて。この限られた短い人生の中で、有象無象の本を読んでる場合じゃねぇって思ってしまったんですよね。世の中にはおもしろい作品がたくさんたくさんあるんだって気付かされてしまった。

ストーリーの運び方、文章が圧倒的に上手い。上手いというなどおこがましいけれど、ウマイとかキレイとかいう形容詞しか出てこない。こんなに〈無駄〉がない文章をお書きになる方だったかと驚かされた。

『英雄の書』『悲嘆の門』ほどではないけれど、それに近い世界を感じた。最近の「現代モノ」はこういうテイストが多くなってきたような気がする。ただの物語だけでなくて、物語のひとつ上のレイヤーについての哲学だったり思想だったりという感じがする。