恒川光太郎『草祭』

草祭

草祭

読み終わった本の記録

かげろう蜥蜴は特別に存在があやふやな領域に棲んでいたんだろうけど、考えてみれば今世にあるものも、みな多かれ少なかれあやふやなバランスに在るものなんじゃないかと思うよ。何か一つの要因をずらしたり、入れ替えたりしたら、ふっと消えてしまうものはたくさんあるんじゃない。

「恒川ワールド」には、怖いもの・残酷なものと、優しいもの・心を癒やしてくれるものが共存している。

通勤電車に揺られながら、あるいは会社の昼休みに読み始める中編は、ふっと別の世界に連れて行ってくれて、これがとてつもなく気持ちがいい。「面白い」「エキサイティングな」ものはほかにもたくさんあると思うけれど、気持ちがいいというのは稀有ではないだろうか。

これまで読んできたものとは違い、「美奥」と名付けられた土地(あるいは存在)を中心に、各中編が少しずつ関係しあう構造になっていた。

『屋根猩猩』の明るさと暗さ、『天化の宿』の熱さと冷たさが印象的だった。


  1. けものはら
  2. 屋根猩猩 ☆☆
  3. くさのゆめがたり
  4. 天化の宿 ☆☆☆
  5. 朝の朧町 ☆