ルース・ベネディクト『菊と刀』

菊と刀 (光文社古典新訳文庫)

菊と刀 (光文社古典新訳文庫)

Amazon Prime Readingで読みました。「新訳」ということで、その表現に是々非々レビューはみられますが、読みやすく、おもしろかったです。とは言いながら、読み終わるのにふた月くらいかかってしまいましたが。

書名を初めて聞いたのは中学生くらいだったような気がします。文化比較論の文脈で紹介されて、そのときは単純に「アメリカは罪の文化、日本は恥の文化」と看破した『菊と刀』という本が有名——的なおぼろげな記憶です。

その後何年もの年月を経て、ようやく初めて読みました。もっと堅苦しい内容かと思い込んでいましたが、具体的なエピソードが随所にあって、読む前の印象とは随分違いました。

その刊行の古さなのに、現在の日本人にもほとんどそのまま通じる内容であることに驚きました。もちろん時代や環境がくだって、特に家庭や女性のあり方には大きな変化があったように感じますが、どういう経緯があって今のようなかたちになったのか・なろうとしているのかを知るのに良書のように思えます。

大戦中と大戦後では、この国はまるで別の国のように変わったように見えます。天皇万歳をしていたかと思えば、次にはギブ・ミー・チョコレートになる。不平や不満、そのくすぶりや爆発はなかったのだろうかと。この点は学校で歴史の勉強をしていても不思議だったんです。多様な見方のひとつではあるでしょうが、この変化を「日本人とは」という切り口で解き明かしている部分には目からウロコのような気持ちでした。

文化論・文化比較論としてだけでなく、近代史としても良書のように思えます。