荻原浩『あの日にドライブ』

あの日にドライブ (光文社文庫)

あの日にドライブ (光文社文庫)

読み終わった本の記録。

もちろんおもしろかった。が、自分の記録として残しておくなら、もう一つ入り込めなかった。

自分の精神が小説に向く状態ではなかったというのが大きな一つ。ここに描かれている、あったかもしれない「たら」「れば」を、自分に引き寄せて思い馳せることができなかったというのが小さな一つ。

あのときああしていれば。違う道を選んでいれば。そういう悔いを抱くには「(私が)選んだ」という杭が要る。来た道にある杭の列を眺めてはじめて、その杭、あの杭を思い出すことができる。ただ私にはそれが無いように思う。選んでこなかったし、今も選べていない。否、小さくは選んできたんだろうけれど、それは負けが少ないほうを避けてきただけ。自分や自分の人生に責任を持って選んだことがないのだ。

そんか私にとって、この主人公・牧村は、ただそれだけで眩しすぎる。