桐野夏生『魂萌え!』

読み終わった本の記録。

話題になってた書名だ!と思って手にとったら、刊行は2005年だった。時の流れの速さよ。

新聞連載だったご様子。連載でこれ着実に書けるの本当にすごいな。

事件モノの土俵の方だと思い込んでいましたが、新境地でした。老年期にかかる主婦が、寡婦になったところから始まる。日常が少しずつあるいはダイナミックに変わっていく物語。

序盤のカプセルホテルのくだりがすごく印象的に感じた。そういう「自分がやったことがないことに飛び込んでみたい」という、自棄な気分になるのは、きっと誰にでもあると思う。美しいとは言えないそんな経験が、自分の内面を変えることってきっとあると思う。

主人公以外のキャラクターが立っているように見えるが、それはきっと相対的なものでしょう。彼ら彼女らの視点から見たら、主人公がきっと劇的に見えるんでしょうね。それぞれに人生があり物語がある。我々が知ることができるのは、外目に見えたり口から語られたりすることの、ごく一部なんですから。