凪良ゆう『汝、星のごとく』

読み終わった本の記録。Amazonの履歴によると2023年5月に買っていたようなのですが、なかなか手を出せずにおいていました。それでも、話題の本をこの近くで読むのは自分としては珍しい。

さわやかな恋愛と、両手に余る絶望と、それでも立って歩くんだという命のきらめきと。全部がある。全部があって胸がいっぱいになる。

終盤、文字通り号泣してしまって、先が読めなくて本を置きましたよね。2度ほど。ここまでになるのは久しぶりの体験でした。

感想はきっと語られ尽くしているでしょうが、一方でどこか1つ2つの場面を切り取って挙げたところで、足りないような気がしてしまう。

愛とは。それに至る過程とは。自由とは。捨てることと選ぶこととは。それぞれの立場で見える世界、語る言葉が異なっていて、それぞれの正しさの中で生きている。章ごとに挟まれる文章の中に、きらりと輝くものが多くてはっとする。筆者が並の勢いで書いてないなというのが分かってしまう。まじで魂を削って出してくれた言葉たちのように、私には見えた。

ヤングケアラーの問題、同性愛の問題にも日常の隣りにあるものとして触れられている。一つ一つが主題になってもおかしくないのに、その手腕が見事です。これらの部分があるからこそ、この年代を象徴する一冊として後世に誇れる部分もあると思う。前段も含めてそういう作品だから、本屋大賞獲るのも必定だったのでしょう。

本作の「大人たち」は結構な割合でクズいのであるが、それをそれだけでは謗らない。主人公たちが愛し、抗い、生きていく様は本当にかっこいい。私は、北原先生に泣かされました。ごく僅かに揺れる様子。そして終盤の台詞の数々に。