冲方丁『サタデーエッセー 冲方丁の読むラジオ』

読み終わった本の記録。なんか重い物語をたくさん読む元気がない気がして、「ラジオ」の文字に惹かれて手に取った本。

NHKの朝のラジオで語っていた内容を抜粋編集したものらしい。NHKのそんなコーナーがあることさえ私は知らなかったんですけれども、いいですね。

ふだんエッセイを買ったり読んだりしないからとても新鮮でした。冲方丁という人はすごいちゃんとした人、真面目な人なんだなと思った。

問題提起や「人それぞれ」に終始せず、ご自身の立ち位置をはっきりさせ、きちんと意見として述べているのがかっこいい。

他の著作も読んでみたいなと思った。歴史物あんまり得意じゃないんだけど、本作で触れられているのは『はなとゆめ』『麒麟児』

「六:経験ってなんだろう?」の章はすごく印象に残りました。物語の持つ役割。「人工的経験」は、現実を捉え直しより良くする方向に考えるきっかけも与えてくれる。

そして物語の書き手は、人をそのような状態から解き放つためにこそ、人工的経験を駆使しているのだと私は思います。現代の物語が担う目的の多くは、おびただしい経験の呪縛から離れ、直接的経験に人を立ち返らせ、五感で実感するその人固有の生へと意識を立ち戻らせることなのです。