冲方丁『はなとゆめ』

読み終わった本の記録。

清少納言と彼女の枕草子をテーマにした作品。

この前、著者のエッセーを読んで物語の作り方・描き方にすごく哲学を感じて読んでみたくなった。しかしすごい。ここまで“文体”を自由自在に操る書き手って他にいるんだろうか。すさまじい労力・ストイックさ・才能を感じる。

💭以下は中盤まで読んだときの感想メモより。

ただ漫然と機械的に日記を書くだけじゃなくて、昔のブログ文化みたいな、エッセイみたいな文章をあえて書く努力をしてみるのもいいかもしれないなと思った。

私は常日ごろ、内罰的な意識と罪悪感、その反対の憤りばかりを抱いている。この目線を外に向ける努力。笑い飛ばす材料にする目線。そういうのを備えておくのが自分のためになるような気がする。

たぶん現代に生きる人々は、InstagramやXのフィードを彩ることで、そういうバランスを取っているんだろうなと推察している。それくらい現代は複雑で面倒になってしまった。仕事や家庭という一面・一本槍では、まっすぐに進めない。一が駄目なら二を出せるように、色んな面と場所を備えておくのが良い。

清少納言の時代には、紙と墨はさぞ貴重だったでしょう(そういう描写が多いです。“書くこと”への憧れが活き活きと描かれている)

今の電子空間には無限の広さと安さがある。その分すぐ消えてしまうけれど。どんなかたちであれ、“生”や“魂”みたいなものが届く文章を、永く残せたら、そんなに嬉しいことは他に無いだろうと思う。