伊坂幸太郎『モダンタイムス』

読み終わった本の記録。

ちょっと怖かった。伊坂幸太郎氏の「ディストピア」物は、胃に迫るような逼迫感があってぎゅぎゅぎゅとなりながら読んでいる。

暴力の描写で始まり、監視の目を疑う流れは、同氏の『火星に住むつもりかい?』を思い出す。また、オーウェル1984年』のような暗さと“無力感”が通底しているように感じた。

伊坂幸太郎『魔王』の後の時系列にあたる作品だそうです。途中まで全然思い出せませんでした。

理不尽な暴力、暗号、システム、「そういうことになっている」先の見えない展開と、そして意外にも思える展開の繰り返しとも言えると思う。

エンタメ小説に、教訓の類を見出すのは無粋だとは思いつつ、本作はかなりメッセージ性が強い方ではないかしら、と感じた。

国家や何かの枠にあって、小市民の当人たちが善悪の自覚さえできない、仕組みやシステム。それに対するやるかたない憤りは少なくとも読み取れる。それが良いとも悪いとも言ってはいないが、これだけ書く以上、そして「小説家」の名前と言葉を借りて述べている以上。誰か一人でも、何か一つでも届いて変わるんじゃないかという願いは、きっとそこにあるでしょう。

「そう。くよくよ悩んで、だけど仕事だからやる、それならわかるけど、ただ、何にも考えずに、人を傷つけて、きゃっきゃと騒いでるのは駄目だね」


「わたしはね、誰もが善人であるべきとは思わないし、悪いことをするのもアリだと思うけど、思い悩まない人が一番嫌いなの」