宮部みゆき『希望荘』

希望荘 (文春文庫)

希望荘 (文春文庫)

読み終わった本の記録。

星5つをつけたい。杉村三郎シリーズの第4弾。初めての短編。

すごく面白かった。名もなき毒、ペテロの葬列いずれも大長編だったのに対して、この作品はそれぞれの短編がすごくよくまとまっていて、これまで読んできた杉村三郎シリーズの中では一番好きです。

てっきり、警官でもなく探偵でもなく、主人公がいわゆる「普通の人」の立場から「事件」に向き合うのが、このシリーズのテーマだと思いこんでいた部分があった。そういう意味ではこの作品から(駆け出しの)探偵になることにちょっと驚きはあったけど、生活と地続きの常識人たる杉村氏の目線と奮闘が、逆に新しい。面白い。

かっこいいとは限らない、すべてが丸く収まるとは限らない、限らないづくしの苦悩。解き明かす側はとても小さい。対して描かれる悪意が、怖いほど暗く深かったりする。

  • 聖域
  • 希望荘
  • 砂男 ☆☆☆
  • 二重身☆☆