読み終わった本の記録。
- 虫歯とピアニスト
- 正雄の秋
- アンナの十二月
- 手紙に乗せて
- 妊婦と隣人
- 妻と選挙
まさかのシリーズ物でした。『家日和』から始まる家シリーズというものらしい。しかしあとがきでそれを知るくらいですから、独立した作品として読んでまったく問題無い。まして短編集ですし。こういう位置付けの作品が私は大好きです。
表題からこれ不穏な作品なのかなと勝手に想像してしまっていたが、真逆でした。どの短編もふわっと心が温かくなる優しいものでした。
どれもよかったなあ。
「正雄の秋」職場での人間関係と力関係と、自分の立ち位置。その受容。サラリーマンにとっては、そのまま自分の物語だった。
「手紙に乗せて」人の喪失は、簡単には癒えない。でも寄り添うことはできる。少し遠い距離感がリアルで、なんでこんなに微妙な描写が上手いんだとシビれる。手を介して渡される手紙というのが良い。
フィクションだから、作品なのだから。過剰な期待はしてはいけないけれど、こういう作品を書ける著者は、やっぱり人の営みに対してすごく優しいまなざしを持ってらっしゃるに違いないと思ってしまう。