中山七里『毒島刑事最後の事件』『作家刑事毒島の嘲笑』

読み終わった本の記録。

「作家刑事」になる前、「刑事」としての最後の事件を描いた、いわゆる前日譚。シリーズ刊行順としては2作目にあたるそうな。

しかし「最後の事件」という書名。そして〈教授〉の存在はあきらかに、シャーロック・ホームズとモリアーティ教授のオマージュですよね。ワトソン役として麻生が右往左往する構造にニヤリとさせられる。

舌鋒が相変わらず鋭すぎて、絶望的に追い詰められます。読者が。そしてそれがだんだん快感になってくる。Mっ気のある読者には堪らないと思います。

刊行2020年。経済格差と、それが明らかになる現代が舞台装置。

「顔のいい」犬養刑事のメンターとしての面も見られる。楽しい。


続けて読みました。

刊行2022年。政治的対立(左右)を舞台装置に、それに見え隠れする犯罪。

刑事課と公安課のタッグ。左派・右派にともに、毒島先生の毒舌が冴え渡ります。これもう、中山先生のクダ巻きちゃうのもう…と思えてきますが、それが楽しいのです。

他のシリーズ物に比べると、章ごとに提示される事件(とその意外な結末)が、それぞれ多様な色を感じる。筆者の引き出しの広さよ。

近書なので、モデルにしたのかなと思われる実際にあった事件をすぐに思い出せます。京アニ事件、過労死訴訟、元首相襲撃、その他いろいろ。

うふ、うふふふ。すごくクセになります。