- 作者: 荻原浩
- 出版社/メーカー: 双葉社
- 発売日: 2016/08/04
- メディア: 文庫
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読み終わった本の記録。
実は図書館で本を借りるとき、「時間的に読めないかもしれない、でも読む本が手元にないのは寂しい。しかし読みさして読みきれずに返却期限を迎えてしまうかもしれないから、読みきれなくても後悔しないような、タイトルも知らない1冊」を借りることがままある。これはその1冊だった。
しかしとんでもなくおもしろかった。よこしまな態度で臨んでごめんなさい。こういうとき図書館は素晴らしいなと思う。予算枠による切実なキュレーション(入口)と、空間的に閉架せざるを得ない淘汰圧力(出口)によって、基本的にどれを選んでも名作なのである。おもしろいのです。
荻原浩氏の作品は、基本的に明るいように思う。著者自身が楽しんで書いておられるように感じられて、こちらまでつられて楽しくなる。
現代の尾島健太と、大戦中昭和19年の石庭吾一が入れ替わる。それぞれの置かれた環境で、自分と世界のありようにもがく様がとても愛おしい。ともすれば暗いテーマになりそうな題材で、ネアカで反骨の健太と生真面目がゆえに現代では調子っぱずれの吾一の奮闘には、がんばれがんばれと自然に応援したくなる。読めて本当に良かった。