恒川光太郎『秋の牢獄』

秋の牢獄 (角川ホラー文庫)

秋の牢獄 (角川ホラー文庫)

読んだ本の記録。

『夜市』『竜が最後に帰る場所』に続いて、読んだのは3作品目。

言葉のセンスが圧倒的。冒頭3行くらいですっと入り込めてしまい、そのままずっと不思議な世界をたゆたっているような感覚がずうっと続く。難しい言葉や遠回しな表現があるわけじゃないのに、五感を吸い寄せられるような感じがあって、くせになります。静かなエネルギーがすごくて、恒川ワールドにしばらくひたっていると「現実に戻れなくなっちゃう!」って心配になる。

「秋の牢獄」「神家没落」「幻は夜に成長する」の3篇。表題にもなっているある種の〈牢獄〉がテーマにあったりするのかしら。「幻は〜」なんかはちょっと恩田陸『常野物語』を思い出したりした。

11月7日を繰り返す。タイムリープものというのは古今東西あるでしょうが、ここまで繊細なものは初めて触れたかもしれない。

個人的には「神家没落」の雰囲気が好き。