冲方丁『十二人の死にたい子供たち』

読み終わった本の記録。

タイトルや映画のイメージで勝手に想像していたより「怒れる男達」のオマージュだった。寓話か説教かと身構えていたけれど、そんなことよりミステリだった。

著者の、自在に文体を変える様が私は好きです。この作品では「視点」の上手さが際立っていた。

12人の登場人物が等しく出番を与えられている。それを誰が語っているのか・考えているのかを迷子にならせずに書き切ることの凄さです。ちょっとの加減のミスで分からなくなりそうなところを、ミスリードを含ませながらぐいぐい読ませるのが楽しい。

内面の描写も事象の描写も、きっと嘘は無い。しかし彼ら彼女ら信頼できない語り手たちが大活躍してくれる。

もっと暗い感じに、「人を描く」感じにもできたと思うけど、あえてそれをせずに淡々と進んでいく在り方が心地よかった。