貴志祐介『天使の囀り』

読み終わった本の記録。

友人の一人から書名を聞いていて、そういえば貴志祐介作品の中でも避けていたなと思っていた。新しい図書館にはこういう少し前のエンタメ作品が充実していたので、これを機会に借りてきた。

THEホラーである。怖かった。

『マンホール』という漫画や、中島らもガダラの豚』を思い出すような世界観だった。

スジ自体はわりとシンプルではあるけれど、視点移動の無理のなさと、内面の弱い部分の描写(“信一”の章は秀逸だと思う)が良かった。久しぶりにこういう、事実と物語の境界の混ざったの作品を読んだ気がする。フィクションを補強するうんちく部分がおもしろく読めて、だからこそ「身近にありそう」な怖さが際立っている。