荻原浩『家族写真』

家族写真 (講談社文庫)

家族写真 (講談社文庫)

読み終わった本の記録。

よかった。表題どおり「家族」を中心に描く短編集。文章がめちゃくちゃ読みやすい。

家族と一口に言っても、その構成員の一人から見えるそれや、外から見えるそれは、きっとそれぞれ違うかたちをしている。手に入らなかったものや、欠けてしまったもの。その逆に、本当はそこにあることに気づかないもの。

「家族」を至上とまでは言わないけれど、荻原浩さんらしいあたたかい目線で、ちょうどいい距離感で色んな風景を見せてくれます。

  • 結婚しようよ ☆☆
  • 磯野波平を探して
  • 肉村さん一家 176kg
  • 住宅見学会 ☆☆
  • プラスチック・ファミリー
  • しりとりの、り
  • 家族写真 ☆☆☆

津原泰水『綺譚集』

綺譚集 (創元推理文庫)

綺譚集 (創元推理文庫)

読み終わった本の記録。

逸る読み方をしてしまうともったいない気がして、音読するのに似たペースで読みました。もうね、すごいです。言葉と表現に挑もうとするこれはいっそ狂気ですわ。

『赤假面傳』『脛骨』『黄昏抜歯』『ドービニィの庭で』あたりが、凄惨すぎず漂う雰囲気が好き。

小川糸『食堂かたつむり』

食堂かたつむり (ポプラ文庫)

食堂かたつむり (ポプラ文庫)

読み終わった本の記録。

『ツバキ文具店』以来かしら。独特な世界があって気になっていましたので、手にとってみました。自分は料理ができないのでこの設定・描写だけで小説以外の部分で「すごいわぁ」と感心してしまいます。

欠損からの試行錯誤、わだかまりの解消と成長という流れに違和はなく、おもしろかったです。途中のある意味で“むごい”描写についても、キレイなだけではない世界の説明として必要なものだと考えれば、よかったと思う。むしろそこにもっと割いてもいいと思ったくらい。

わたしの貧困な発想ですと「その一回の食事って一体いくらなの!?」というハテナが最後までつきまとってしまいました。すっごい厳選された素材と尽きぬ手間をかけていらっしゃいますけど、受け付けるのは原則1日1組とな。え、採算どうやってとるの?!無一文からのスタートとかおっしゃってなかった? 貴族しかお住まいならない場所なの? みたいな。飲食店がやっていくのに必要なことってそんなキレイなことばかりではない気がする。

『ツバキ〜』もそうでしたが、基本的に主人公の生活にめっちゃゆとりがあるんですよね。日々の生活に追われているようなわたくしからすると、細かいところが気になってしまう面もありました。