十二国記 7 『華胥の幽夢』

読み終わった本の記録。

表題に通じる『華胥』がとても良かった。政とは、正しさとは。この世界には天意があるから、いっそそれは救いでさえあるのではないか。天意の見えない我々は、道を誤ったとき、道を外れたとき、それに気づくことができるんだろうか。

『乗月』も良い。気にならざるをえない部分を補完してくれつつ、すごく優しさに満ちている。

短編という体裁でありながら、ここにきてもどれも人と国と時の流れを鮮やかに書き上げる。すごい。

十二国記 6 『図南の翼』

読み終わった本の記録。

どこを見ても「最高傑作」と名高く、まずここまでは読みたかった。前評判の印象を持ちすぎて読むのは良くないけれど、これは図抜けていた。

王を目指す少女の物語。恭国と黄海。明るく前向きになれる。

視点があちこちに行ったりしないし、登場人物や地名なんかの固有名詞も多くないから、まっすぐ素直に読める。気がついたら朝の5時でした。一度も本を置けなかった。そろそろいい加減朝型の生活リズムに戻さなくちゃいけないのに。

キャラクターの圧倒的な力。珠晶と頑丘のかけあいにはくすっとさせてもらえるし、利広の油断ならない感じが緊張感をもたらしてくれる。作中でおそらく重要となる「王のあり方」についての問答は、Fateの「聖杯問答」をちょっと思い出したりしました。王たらしめるものは何か、という問いはすなわち、自分の人生をどう決めるかという問いなのかもしれない。

十二国記 5 『丕緒の鳥』

読み終わった本の記録。「オリジナル短編集」

これまで読んできた中で、一番好きかもしれない。十二国の世界観が土台にあって初めてある程度分かるようなものだから、本作単体としては読めないとは思うのだけれど。

派手なアクションも流転する陰謀もあるわけではないけれど、市井に生きる(王でもなく麒麟でもない)人々の生活とか思いが、淡々と静謐に描かれる。『丕緒の鳥』のラスト数ページで泣きそうになった。これ以上ない言葉のチョイスが美しい。

『落照の獄』に至っては道徳の教科書に全文掲載されてもおかしくないと思いましたが、これもうライトノベルとか言えないだろう。


  • 丕緒の鳥 ☆☆
  • 落照の獄
  • 青条の蘭 ☆☆
  • 風信