西林克彦『わかったつもり〜読解力がつかない本当の原因〜』

わかったつもり?読解力がつかない本当の原因? (光文社新書)

わかったつもり?読解力がつかない本当の原因? (光文社新書)

西林克彦『わかったつもり〜読解力がつかない本当の原因〜』

Amazon Prime Readingで読了。

例題ないし例文が出てきますが、「わかったつもり」で読んではいけないのではないかとだんだん警戒して読むようになるので、「わかりやすい」地の文の部分でさえ、読むのがたいそう疲れます。

ネットやメールやなんかのコミュニケーションが溢れているこの時代に、「よくわかる」まで読み込む必要のある文章が、果たして一体どれくらいあるんだろうという疑問も抱きつつ。もちろん別にそういうインスタントな文章を対象にしてるわけではないのですよ。主に「国語教育」という観点で書かれていて、本書の例も多くは文学や評論です。つい卑近な例に引き寄せて考えてしまうのはよくないとも書かれています。

一方、自分を棚に上げてしまいますが「そんな風には読めんだろう」という反応をする人や言説が目立つようになってきたようにも感じます。筆者のスタンスはわかりませんが、なんとなくその辺りを想起してしまいますよね。いかんまたスキーマが発動している。

むしろ「書く」ときの心得として読むとよいのではないかと思います。

  • 誤読されうる書き方をしていないか
  • 文脈を意識しているか。あるいは侵略そうな文脈を予め排除する工夫はできないか

エトセトラエトセトラ。まあこんな文章を書いて上げてしまうくらいですから、一読したくらいで身につくくらいだったら苦労いたしませんですね。


ミステリ小説の分野に「叙述トリック」ってありますよね。あれって「わかったつもり」をつかいこなした極致なんだ!文章書く人すごい!みたいなことも考えました。

飯間浩明『辞書を編む』

辞書を編む (光文社新書)

辞書を編む (光文社新書)

Amazon Prime Readingで読了。これPrime Readingの対象にしていいんでしょうか。わりと半年分の会費くらいの価値があるように感じましたよ。

三浦しをんさんの『舟を編む』は傑作でしたね。アニメもよかったし。それで本職の方からの視点の本が出るーーというのがまたフィクションが現実を覆すようでダイナミック。実際【愛】のくだりではそのような描写があるので、小説や物語の力を感じました。

紙の辞書を買うどころか「ひく」という行為自体、考えてみれば15年くらい触れていません…。ちょっと本気で欲しくなりました。欲しくなりましたが、辞書ってどこでどういうかたちで買って、どこに置くものだっけ……。

子供のころに感じた「同語反復」(Aの語釈にあるBをひくと、Bの語釈にAが出てくる)についても触れられてて、すごく嬉しかったです。ぼくが感じた不満と憤りは間違ってなかったんや!

終わりの章にもありましたが、いわゆるデジタル化の波は否応なく迫ってくるし、なんなら人間が追いつかないといけないくらいの時代です。そんな中で言葉の世界に立ち向かっていく姿は、とてもかっこよくみえました。

加納朋子『ななつのこ』

Amazon Prime Readingで読了。

これ好きでした!いいですね。ちょっとの謎と、素敵な謎解き。おしつけがましくないのがいい。

Amazonのレビューを読んでると「ミステリーとして足りない」的なことも多いけど、文中でも別に「これが答えだ!」なんて表現はなかったと思うんだけどなぁ。

日常・文中の物語・手紙と、かなり複雑な構造をしているのにもかかわらず、それを苦に感じさせない筆力はすさまじいと思いました。むしろ編が進むほど、次は?次は?と気になっていく。

そういえば、デパートの屋上の遊園地っていまもあるところにはあるんでしょうか。