伊坂幸太郎『逆ソクラテス』

読み終わった本の記録。

人生で好きな本の上位に入ってしまうかもしれない。改めて購入する候補。

表題の一作目「逆ソクラテス」で撃ち抜かれてしまった。なんて小説が上手いんだと。なんて屈託があって、文章と構成が緻密で、それにして爽やかなラストなんだと。

一遍一遍の完成度が高すぎて、次の編に進むのに躊躇する。途中にYouTubeの軽めの動画とか挟んでしまっている。読み終わるのがもったいなくて、意図してゆっくりと読み進めた。

「反復」「繰り返し」が美しい。なんというんだろうこういうの。音楽みたい。同じフレーズが繰り返されながらそのどれもが微妙に音色や和音が変わり、クライマックスに向かっていくような。

少年少女(小学生や中学生)が主人公。それぞれのモチーフの中で引用される逸話やフレーズが、彼らのとっての事件や屈託を経て、別のかたちをとって「逆」になる。この鮮やかさといったら至上の至福です。

どんな人にも条件も付けずに勧められる、そんな本を久しぶりに読めたように思う。