ジョージ・オーウェル『一九八四年』

読み終わった本の記録。

少し前に『プロジェクト・ヘイル・メアリー』を買ったSFセールのときに、一緒に買っていたもの。Kindle版。

すごく昔、紙の本はなぜか弟が買ってきていた。たしか大学の課題か何かで必要だったらしい。それを借りて読んだ記憶がある。

あらすじしか覚えていなかったが、それでも「ビッグ・ブラザー」「ニュースピーク」「真理省」のそれぞれの概念はよく覚えていた。それほど衝撃的だったんだろうと思う。何よりこの〈誰を信じられるのか分からない〉という緊張感が記憶にあったものより一層すごかった。

二重思考」「ニュースピーク」に関する記述・思索はこれはもう本当に画期的だと思う。そして本書が長い間“参照”されてきたことの要である。

全体主義共産主義へのカウンターとしての本書の位置付けは語り尽くされてきたんだろうと思うが、これが2022年には、皮肉にも立ち位置が変わって読まれるだろうと思わざるを得ない。時の政権は公文書改竄、公文書破棄、黒塗り、国会未開催が常態になっていて、捏造の手が歴史や世論に及んでいるのではないかと思えてしまうから。そう考えるのもそう考える自分がいるのも疲れるんだが。

序盤・中盤の「日記」の美しい描写を読みながら、少なくとも小市民たる自分には、些細なことでも〈書き残す〉ことしかできないんだろうななんてことも思いました。