三浦しをん『愛なき世界』

三浦氏は天邪鬼である。『光』はすさまじく濃い闇であった。

本作の「愛なき〜」タイトルを真に受けて、わたくしは前情報なくおそるおそる、これは本当におそるおそる読んでいました。まあ大変。「愛ある」至上の作品だった。

藤丸くんがかわいい。かわいいで済まされないほど高スペック男子だろこれ。キャラクターがアニメ or ラノベ的なきらいがあるけど、これが良さである。「〜っす」「〜すよ」って実際に言う料理上手な好青年がいたら、普通はイチコロである。

植物という「愛なき」ものが先なのか、「愛なき」題材から愛を描こうとしたのが先なのか、どっちなんだろうと想像してみるのは楽しい。三浦氏はお仕事小説が上手である。『舟を編む』も『ハケンアニメ!』も。添えられている関係者への謝辞、参考文献の量がすごい。