アンディ・ウィアー『プロジェクト・ヘイル・メアリー』

ハヤカワSFセールで買いました。Kindle版。定価で買えなくて申し訳ない。ただしかし、他のSF古典・名作も同じタイミングでいくつかまとめて買いましたので赦してほしい。

聞いていた噂通りにめちゃくちゃおもしろかった。『火星の人』も夢中になって読んだが、本作についてはそれ以上だった。ちょうど「モンスターハンター サンブレイク」がリリースとなっていたが、それが手につかないくらい。あと、ほとんどをiPhone SEKindleで読んだがそれが気にならないくらい。電子書籍で読んでいてこれまでで一番違和感がなかったかもしれない。谷を越えたかもしれない。

このブログを読む人も少ないだろうし、あえて調べてたどり着く人についてはもう読み終わっているのではないかと思う。つまりネタバレを書きたい。書いてしまいたい。

記憶を取り戻すという時間軸と、主人公はどこにいるのかという空間軸の2つの不明さで始まる。始まりからもうおもしろい。科学と化学のSF的描写がちょうどよい。わたしのような不学者でもギリギリわかる。いやギリギリわかりたい知識欲をエンジンにしてもらえる。相対性理論についての本を若いころに読んでいて本当によかったと思った。量子力学まで踏み込まれると分からないことが多くなるが、その絶妙なラインなのである。

上巻途中からの「邂逅」から先は、読む手が止められない。ロッキーかわいい。

記憶を取り戻す過程のカットインは非常に映像的だなと思った。このカットインが冗長で読みながら迷子になってしまう作品も多いが、これが素晴らしい塩梅だった。上手に本線に戻してくれるという安心感があるので、過去の話でさえ読むのが楽しみになる。あとロッキーかわいい。

どうしても『三体』に比べられている。蟹とカニカマとかいうツイートも見たが、カニカマの美味しさを知る。『三体』もあれ、やたらと重くガチめな空気が漂っているが、書き味と訳文が違えばウィアー作品のような洒脱さがあるのではないかと思ったんですよね。「ヘイル・メアリー」くらいのエンタメがちょうどいいという層は絶対にある。

個人的には言語の過程が好きで『あなたの人生の物語』を思い出す。あるいはバディ物としての『寄生獣』を思い出した。ミギーである。とにかくロッキーである。

昨晩2:00まで夢中で読んでしまい、その勢いで書き殴れたことがわたしは嬉しい。