劉 慈欣『三体Ⅲ 死神永生』

上巻を読み終わる。2022年1月18日。

『三体Ⅲ 死神永生』〈シシンエイセイ〉の上巻を読み終わる。壮大すぎて楽しい。Ⅱ黒暗森林より好きかもしれない。というかあの長大な物語をベースにして、その先を描いてくれることに喜びを感じる。

刊行前の宣伝文「黒暗森林とは別の、階梯計画があった」みたいなのを目にしていたから、私はてっきりⅡ黒暗森林のサイドストーリー、アナザーストーリーのようなものを想像していた。

これが見事に裏切られました。マジで本気の正当続編でした。「Ⅲ」でした。

ソードホルダー。大移住。四次元のかけら。

わりと淡々と翻訳文が描かれるからハードSFらしさを感じてしまうけど、これはたぶんもっとライトにエンタメ的に受け取っていいSFだろうと思う。


下巻を読み終わる。2022年1月20日

おとぎ話から始まるストーリーは大変に美しい。舞台装置としての出来が良すぎる。劇中劇に打ちのめされてしまう。

下巻にあたっては、〈歌い手〉の章から先の怒涛の展開をどう捉えるかに依ると思った。

それまでのいわゆる宇宙・恒星系SFから、一気に次元・世界SFになる。前半から十分ハードだったのがそれ以上にハードになる。SFの歴史の教科書のようです。

解説にもあるが「セカイ系」の影響、系譜を抜きには語れないとは思う。展開が速すぎて正直追いつけない部分もあった。ただ、それに振り回されるのが楽しい。黒暗森林というまったく素晴らしい着地から、その先の世界を真っ向から描いてくれたことが嬉しい。

SF的なガジェット・仕組みはもちろんだが、それ以上に「人間」「人間社会」への洞察の鋭さが一番に感じ入りました。大きな「指針」「成功」「失敗」「罪」それぞれが、時間や立場が変わることでどんどんとその姿を変えていく。人の愚かさと可愛らしさは表裏一体である。