藤井太洋『Gene Mapper -full build-』

Gene Mapper -full build-

Gene Mapper -full build-

読み終わった本の記録。Kindle版。

めっちゃおもしろかったです! どういうめぐり合わせか、日本人著者の作品を読むのが久しぶりになった。文章がとても楽しい!

きのうの夕食後に読み始めて、夢中で読んでしまって……ちょっと睡眠と、ちょっと仕事を挟んで……きょうの昼過ぎに読み終わってしまった。読み終えてしまうのがもったいなくて寂しい。

話題になっていたのは知っていたものの、SF好きの人が勧めているSFって超難解なイメージがあるんですよ。そしてハードなSFだと、登場するガジェットや設定がもはや〈概念〉とか〈思想〉に近くなってくものがあって、理解が追いつかないことがある。「ふーん、そういうことね」と分かったような顔して読むのだけど、だいたいわたしは分かっていません。

本著はそんなことが全然なかった。いまこの時代から進んで繋がった先にある未来という装置の上で、そこに居る人々、そこにある装置が、めちゃくちゃ自然に感じられる。なんなら刊行から今日までに、林田さんや黒川さんの世界にぐっと近づいた感じがある。特に、拡張現実の〈ワークスペース〉や〈アバター〉なんかは、2020年コロナ禍で、一気に近づいたのではないか。

ITと一緒に描かれるのが「作物」であって、それに美術的加工を施す仕事があるっていう設定がもうおもしろい。

林田、黒川、キタムラほかキャラクターも愛嬌があって好き。ストーリーのテンポも心地よかった。いい作品に出会えました。