中島義道『カイン―自分の「弱さ」に悩むきみへ―』

「ああ、ぼくも他人に迷惑> をかけることができるんだ、そう心の底から実感する必要がある。感動する必要がある。
きみは、「いい子」の衣を鎧のようにびっしりまとっているから、それを溶かすにはこうした「覚醒した反抗」を不断に実行しなければならないのだ。これこそ、マジョリティにはまったくわからないことなんだろうが。」

読み終わった本の記録。前に手にとった『ひとを愛することができない マイナスのナルシスの告白 (角川文庫)』と同じ時期に購入していたものの、それにあまりに衝撃を受けてしまって読み進められていなかったもの。

相変わらず緻密に(反論を封じ込めるほどの執拗さで)書かれるので、もはや言うことはないのだけれど、私はどこかで願っている。願っていた。

たぶんこの「生きづらさ」「弱さ」は私だけが感じているものではなく、私の周りの「誰もが」本当は同じように感じていて、「なお」それを包み隠して上手に生きているのではないかと。本当は苦しみながら悩みながら闘っているのではないだろうかと。私が特別「特別」なのではないだろうと。それは「自己と他人の同一視」という陥りやすい幻想でしょうか。マジョリティ(カインの敵)であろうとする私の願望でしょうか。

一方、じゃあそれを認めてしまうとする。私はカインであり、それ以外は私を理解することのない「鈍感な世間」であるとする。それって怖いことです。厨二病のそれと見分けがつくだろうか。自分が自分を責めるのを恥じ入るのを止められるだろうか。強さの一面だと割り切れるだろうか。

本書は(その書名が表す通り)若いうちに出会っていたかったと感じます。