- 作者: 三浦しをん
- 出版社/メーカー: 中央公論新社
- 発売日: 2018/06/22
- メディア: 文庫
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梶さんとお近づきになりたい。エヴァンゲリオンの加持さんもかっこよかったけど、いまは梶さん。
いいなあ。とてもよい。谷崎潤一郎『細雪』も読まなければいけないリストに入れよう。青空文庫にあるかな。まだ無いかな。
三浦しをんさんの作品は、『光』みたいな一部の例外はあるだろうけど、基本的に優しくあたたかい。もちろんただ〈ぬるい〉と感じないのは、不幸や悪意をきちんと描いた世界で、なお登場人物たちに陽を当て、温度を感じさせてくれるからだと思う。
本作は解説を読んで驚いた。『細雪』をベースにという前提があるという。それなのにきちんと三浦ワールド。
執筆された二〇一五年は谷崎の没後五〇年にあたっていた。画期的な谷崎の新全集が刊行され、その版元から谷崎作品にちなんだ書下ろし作品が何人かの第一線の現代作家に委嘱された
自分は生物学的には男だけど、年齢が近い女性たちの生活が舞台とあって、さりげない文脈で刺さってしまう言葉が多かった。
佐知にとっての伊勢丹は、自身の体調と精神状態を測るバロメーターだ。たいがいは、伊勢丹のきらめきに射ぬかれ、なにも買わずに敗退する。よっぽど絶好調なときでないと、地下の食品売り場に並ぶ宝石みたいな見た目と値段の菓子をまえに、「世界には戦争したり飢えたりしてるひともいるのに、私は甘いもんを食べてる場合なのか」と余計なことを考えだし、叫びたくなる。伊勢丹で心おきなく消費するには、かなりの胆力と心身両面での充実が要求されるのである。
この目線の正確さ。
経験を重ねることと無知であることは、一見相反するように思えるが、「鈍感になる」という一点できわめて似ている。
わたしのコトカナ? どんな洞察を得れば、この言葉を紡げるようになるのだろう。