西加奈子『サラバ!』

長いこと気になっていた書籍。当時(受賞当時)いろいろな方面から絶賛されていた記憶がある。

ヤコブ、須玖君のくだりの、揺れ動く感じは秀逸。思い当たる節がありすぎる。初めて言語化された光景があったように思う。

東京編の足元のぐらぐらしている感じも、事柄を並べるだけなら凡庸になりそうなのに、なんて面白いんだこの先に何があるんだと思わされてしまう。

と、ここまで多少メモを書きながら読んでいたのだが、下巻の中ごろから怒涛の力強さがあって、ひたすらに読んでしまった。

奈落の底にも段はある。

僕と姉、母と父、信じるもの。それぞれの相転移が目まぐるしく強くたたみかけてくる。これが(芥川賞ではなく)直木賞たるところだろうか。

洞察と、物語に対する信頼と、文章の美しさに一発で射抜かれたような感覚。

僕は、生きている。
生きているということは、信じているということだ。
僕が生きていることを、生き続けてゆくことを、僕が信じているということだ。


  • 上巻
    • 猟奇的な姉と、僕の幼少時代
    • エジプト、カイロ、ザマレク
    • サトラコヲモンサマ誕生
  • 下巻
    • 圷家の、あるいは今橋家の、完全なる崩壊
    • 残酷な未来
    • 「あなたが信じるものを、誰かに決めさせてはいけないわ」