十二国記 5 『丕緒の鳥』

読み終わった本の記録。「オリジナル短編集」

これまで読んできた中で、一番好きかもしれない。十二国の世界観が土台にあって初めてある程度分かるようなものだから、本作単体としては読めないとは思うのだけれど。

派手なアクションも流転する陰謀もあるわけではないけれど、市井に生きる(王でもなく麒麟でもない)人々の生活とか思いが、淡々と静謐に描かれる。『丕緒の鳥』のラスト数ページで泣きそうになった。これ以上ない言葉のチョイスが美しい。

『落照の獄』に至っては道徳の教科書に全文掲載されてもおかしくないと思いましたが、これもうライトノベルとか言えないだろう。


  • 丕緒の鳥 ☆☆
  • 落照の獄
  • 青条の蘭 ☆☆
  • 風信

十二国記 4 『風の万里 黎明の空』上下

風の万里  黎明の空 (上) 十二国記 4 (新潮文庫)

風の万里 黎明の空 (上) 十二国記 4 (新潮文庫)

風の万里  黎明の空 (下) 十二国記 4 (新潮文庫)

風の万里 黎明の空 (下) 十二国記 4 (新潮文庫)

読み終わった本の記録。

3人の少女の物語。どんどん世界が広くなっていく。

少女たちの置かれた立場とそこから生じる思いや感情が、その歩みとともに二転三転していく様。その描き方が丁寧で感動的。

上下巻という長編で人も地名も多くて一筋縄ではいかない。一気に読まないと正直「どこのだれだったけ」ってなる自信がある。3つの流れが合流して大きな流れになるラストは、すごく素敵だった。

十二国記 3 『東の海神 西の滄海』

東の海神(わだつみ)  西の滄海 十二国記 3 (新潮文庫)

東の海神(わだつみ) 西の滄海 十二国記 3 (新潮文庫)

読み終わった本の記録。

雁の国の、王と麒麟。その出会いと国の再興。

これより前の作品に比べて、ずっと大人向けの内容になってるように感じる。用語の説明は少ないし、時代の基礎教養でさえそう。何より人の裡の暗部の描写がエグい。人と人があるからこそそこに生じる、羨望や嫉妬や虚栄心。善と悪に両断できない正義と正義のせめぎ合い。

歳をとってしまった私には、偽候の“道程”を掃いて捨てることはできないなぁと感じてしまった。