恒川光太郎『雷の季節の終わりに』

雷の季節の終わりに (角川ホラー文庫)

雷の季節の終わりに (角川ホラー文庫)

読み終わった本の記録。

大事に、大事に読んだ。長編。

言葉と世界がなんて美しい。ファンタジーともSFとも言えると思うけど、“穏”と世界の狭間がありありと情景として浮かぶのは何故だろう。世界も力も具体的な説明はないのに、そういうものだ、と感じさせられてしまうのは何故だろう。

主人公と風わいわいの冒険譚と言ってしまえばそうだけど、その一言でくくってしまってはもったいない。大きな〈物語〉のごく一部、わずかな時間・空間の情景をかいま見せてもらえたに過ぎない気もする。


穏、賢也、闇番、風わいわい

荻原浩『神様からひと言』

神様からひと言 (光文社文庫)

神様からひと言 (光文社文庫)

読み終わった本の記録。

やはり優しくて明るいまなざしがベースにあってよかった。やることのない(酔っ払っていない)週末だったということもあるけど、読み始めると止まらなくなってどんどん読んでしまった。お仕事ってたいへん。

珠川食品のお客様相談室にとばされてしまった佐倉涼平の奮闘記。27歳という年齢設定が絶妙で、会社や仕事への諦観を抱きながらも、義憤のエネルギーも捨てられない。わたしなぞから見ると「有能」のこの上ないスペックに見えるけれど、与えられた場所(仕事)と、私生活の過去と現在に振り回されている姿が共感を誘います。

中山七里『さよならドビュッシー』

さよならドビュッシー (宝島社文庫)

さよならドビュッシー (宝島社文庫)

読み終わった本の記録。

いましたよまた。Kindleになってない作品群を抱えた作家が(調べたところ別のシリーズでは電子化されているものもあるようで)

今日は冠婚葬祭の黒いスーツを買いに行く用事があったんですけど、小春日和のうららかな日差しを味わいたくて(なかなか出るのがおっくうで)気づいたら終盤まで読みきっていました。

「どんでん返しの帝王」の異名を、というか恥ずかしながら筆者の名前を存じ上げなかったわけなのですが、これはまたおもしろい。あとで調べたWikipediaの充実さ加減も。お名前から勝手に女性かと想像していたんですが、まさかの男性。ストーリーの軽妙な運び方も、無理のない言葉選びも、とても好きです。

多作な方のようで、また読むべき本が尽きないことを知ってしまった焦燥と幸福。


火事。ピアノ。相続。岬洋介先生。