三浦しをん『風が強く吹いている』

風が強く吹いている (新潮文庫)

風が強く吹いている (新潮文庫)

読んだ本の記録。小説ってすごいなと思った。どうしたらこんな物語が書けるようになるんだろう。

今更なんですけれど。今更なんですけれどようやっと読めた。もう学生でもなく歳をとったし、もともと運動が好きじゃないわたしのような者が手を伸ばすには、前情報が眩しすぎたのです。駅伝って。走るのって。第一それって文章にできるものなのかなって。などといろんな言い訳をしながら。

読んで本当によかった。素晴らしい。そりゃあ代表作になります。現代を代表する作家の一人になります。文句なしです。

中盤以降は細かな描写や台詞にも、何度もうるうるして涙がこぼれそうになってしまう。通勤中や仕事の昼休み中に読んでて泣きそうになるもんだから、もう不審者になるところだった。自分から縁遠いものなのに、応援せずにはいられない。

中心に走とハイジという天才・秀才がありながらも、その周囲の相対的には〈凡庸な〉キャラクター、双子やニコチャン先輩やムサたちにむしろ「がんばれ!がんばれ」ってなる。

よかったなー。幸せな時間だった。

荻原浩『ハードボイルド・エッグ』

読み終わった本の記録。

やっぱり「ハードボイルド」の作品好き。しかし括弧付きのハードボイルド。コメディとかコミカルさとかがセットになると安心して読めます。おもしろかった。

日本人はハードボイルド的なかっこよさが直球だと恥ずかしくなっちゃうような感じあるのかしら、うん分かる気がする。

主人公の探偵・最上俊平は今の私と同じ三十三歳の設定だったようで、ちょっとした親近感。

まさかの続編〈目玉焼き〉があるとのことなので、今度探してみる。

辻村深月『クローバーナイト』

クローバーナイト

クローバーナイト

読み終わった本の記録。

辻村深月さんってこういった作品も書くんだ…!というのが正直な感想。連載掲載雑誌の関係もあるでしょうが、基本的に明るい。

子育てをテーマにした、若い夫婦の奮闘、もしくはその周囲のちょっとした謎や秘密。

実際に子育て中の方ほど、落ち着いて読書をする時間をとること自体が難しいかもしれないけれど、「これから」その経験を控えている人、「これまで」その経験があった人には、つきささるのではないかと思う。

悲しいかなわたし自身がもっとも縁遠いテーマだったのですが…。ただ関わりの薄い世界だからこそ、疑似体験させてくれるのが小説・物語の優れたところだなぁとも思います。