西林克彦『わかったつもり〜読解力がつかない本当の原因〜』

わかったつもり?読解力がつかない本当の原因? (光文社新書)

わかったつもり?読解力がつかない本当の原因? (光文社新書)

西林克彦『わかったつもり〜読解力がつかない本当の原因〜』

Amazon Prime Readingで読了。

例題ないし例文が出てきますが、「わかったつもり」で読んではいけないのではないかとだんだん警戒して読むようになるので、「わかりやすい」地の文の部分でさえ、読むのがたいそう疲れます。

ネットやメールやなんかのコミュニケーションが溢れているこの時代に、「よくわかる」まで読み込む必要のある文章が、果たして一体どれくらいあるんだろうという疑問も抱きつつ。もちろん別にそういうインスタントな文章を対象にしてるわけではないのですよ。主に「国語教育」という観点で書かれていて、本書の例も多くは文学や評論です。つい卑近な例に引き寄せて考えてしまうのはよくないとも書かれています。

一方、自分を棚に上げてしまいますが「そんな風には読めんだろう」という反応をする人や言説が目立つようになってきたようにも感じます。筆者のスタンスはわかりませんが、なんとなくその辺りを想起してしまいますよね。いかんまたスキーマが発動している。

むしろ「書く」ときの心得として読むとよいのではないかと思います。

  • 誤読されうる書き方をしていないか
  • 文脈を意識しているか。あるいは侵略そうな文脈を予め排除する工夫はできないか

エトセトラエトセトラ。まあこんな文章を書いて上げてしまうくらいですから、一読したくらいで身につくくらいだったら苦労いたしませんですね。


ミステリ小説の分野に「叙述トリック」ってありますよね。あれって「わかったつもり」をつかいこなした極致なんだ!文章書く人すごい!みたいなことも考えました。