三浦しをん『むかしのはなし』

むかしのはなし (幻冬舎文庫)

むかしのはなし (幻冬舎文庫)

短編集。いわゆる「昔話」をモチーフにした短編で、しかしその途中でこれが全体でひとつのおはなしであることが半ばで明らかになる。

連作短編自体は珍しくないけれど、それが隠されている構造をもつ短編集はけっこう珍しいのではないかと思う。そして構造だけでなく、実は地球滅亡を前にするSFだったことが明らかになる。非常によくできている。

独白という形をとりつつ、メールだったり取り調べだったり日記だったり、それが工夫に富んでいて、まったく飽きることがありません。

ロケット、犬、諦観と愛情。言葉と物語。けっこうどうしようもない主人公たちなのに、憎めない。むしろ愛おしくなるような人物たちでした。