- 作者: 柴田よしき
- 出版社/メーカー: 文藝春秋
- 発売日: 2012/11/09
- メディア: 文庫
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柴田よしきさんってすごい人なんですね。わたしびっくりしましたよ。作風がものすごく広い。
本作は、警察官の男女の「恋愛小説」それも遠距離。事件が起こる。人が亡くなる。しかしその脇できゅんきゅんするっていうね。
RIKOシリーズでみせた、ひとつの謎が次の謎を呼ぶたたみかけるような展開と、それをぐいぐい収束させる圧倒的なプロットは、今回は控えめ。急ぎすぎないペースで、でもきちんと人と社会を描く。
わたしは生粋の東京人なので、田舎も過疎も知らない。というか広すぎる空を見ると不安になるタイプです。だから日菜子の描写にはただ頷くしかでぎせん。ただ黒田に見える東京の像には、ヘッドバンキング。
柴田よしきさんの書き方で感動するのは、30代男性の会話の仕方です。
「〜何を言いたいのかよくわからなくなっちゃった」
「ね、飯、食おう」
くだけてるんですよ。で、これがすごくリアルに感じる。30代の男だって会話してて「なった」「なってしまった」とかめったに口にしないですからね。
黒田は鬱屈としたぶっきらぼうなキャラクターとして描かれます。だから余計にそう感じるのかも知れないけれど、『聖なる黒夜』の会話でも同じように感じたんですよね。
発する言葉を文字にしてしまうと急に幼く、あるいは女々しく感じられてしまうかもしれないところの、ギリギリのリアルさ。すごい。