「男二人と女一人の三角関係と、男一人と女二人の三角関係を比べれば、わかることじゃないか。前者のほうが、決着が早くつきやすい。どっちの男を選ぶのが得か、女はさっさと見きわめて決めるし、男二人は目くばせしあって、折よいところで一方が身を引く。『あいつに俺の女を譲ってやった』と思えれば、身を引いても男のプライドは傷つかないからね」
- 作者: 三浦しをん
- 出版社/メーカー: 文藝春秋
- 発売日: 2012/10/10
- メディア: 文庫
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読了。多田便利軒のスピンオフ続編。前作に登場した人々を語り手を中心にした短編構成で、二人のその後を描く。
相変わらずおもしろうございました。二晩で読み終わってしまって、もう軽く喪失感を覚える月曜日です。
「スピンオフ」と言うと、主役ないしその舞台をそっちのけで別の話が進んでしまうのかと危惧しておりましたが、そんなことはありませんでした。便利屋さんがちゃんと活躍する。それが嬉しい。
今回、章扉に挿絵がありましてこれが素敵です。本文イラストは「下村富美」さんとあります。てか、多田啓介の渋い男前のおっさん具合にノックアウトされましたよ。「ああ!これでよかったんだ!そうこれこれ!」というね。わたしが本文から読み取れる情報と雰囲気を、全て理想に、上方に近づけて思い描いてみていましたが……そうまさにこんな感じだといいなと思っていたその姿が!!素晴らしいイラストです。
そのイラストの映える「光る石」、粗暴だけどなんかかわいい「星良一の優雅な日常」、大人って難しい「由良公は運が悪い」がよかったです。
多田さんがよりまるく、人間らしくなっていてなんか安心しました。前はもっと抜き身のナイフみたいな危なっかしい印象だったのですが。
というか、多田さん自覚ないけど老若男女にモテモテですからね。すごく誠実で実直な人だしね、そりゃあ仕方ないよね。
行天との仲がよくなっててそれはほっこりするけど、行天はもっと嫉妬くらいしたらいいと思うよ!