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道尾秀介『龍神の雨』

龍神の雨 (新潮文庫)

龍神の雨 (新潮文庫)

『向日葵の咲かない夏』に次ぐ代表作でしょうか。図書館で単行本で借りてきました。

雨を背景に交錯する2つの家族の物語。今回こそは「変化球」に対応できるだろうと思っておったのですが、相変わらずだまされました。気持ちがいいほどです。

蓮と圭介の視点からの物語が、楓と辰也のものになったとき、筆者得意の驚く結末が姿を表します。

同時に、2つの家族の真実が明らかになったとき、切ないながらも一条の救いを見るような気がします。

それにしても圭介くんは賢すぎないかとも思いましたが、子供を侮ってはいけないのかもしれません。

道尾秀介『骸の爪』

骸の爪 (幻冬舎文庫)

骸の爪 (幻冬舎文庫)

シリーズものだということを知らずに手にとってしまいました。早く『背の眼』を読まなければならない。真備庄介と道尾秀介の「霊現象探求所シリーズ」の2作目にあたる作品とのこと。

仏像をテーマにした作品で、「准胝観音」が出てきたくだりで「あれ? なんか読んだことあるような気がする」と思ったら、森絵都風に舞いあがるビニールシート』の一編『鐘の音』でした。

わたし自身は仏像にまったく詳しくないので、それはもう「へぇ。そういうもんなんだー」と感心しながら読むしかなかったのですが、著者はこの分野に非常に造詣が深いそうですね。

ミステリーでありつつホラー寄り?と言えると思うのですが、怖い・気味が悪い描写がさすがに上手でした。同じ著者の作品を読んでしまっていると「おっといけない、この描写にだまされないぞ」という意識がついてまわってしまうのが難点といえば難点でしょうか。

とはいいつつ、相も変わらず敷き詰められた伏線が、小さな波、大きな波、去ったと思ったらまた波……というように展開する中盤以降は圧倒的です。

三浦しをん『むかしのはなし』

むかしのはなし (幻冬舎文庫)

むかしのはなし (幻冬舎文庫)

短編集。いわゆる「昔話」をモチーフにした短編で、しかしその途中でこれが全体でひとつのおはなしであることが半ばで明らかになる。

連作短編自体は珍しくないけれど、それが隠されている構造をもつ短編集はけっこう珍しいのではないかと思う。そして構造だけでなく、実は地球滅亡を前にするSFだったことが明らかになる。非常によくできている。

独白という形をとりつつ、メールだったり取り調べだったり日記だったり、それが工夫に富んでいて、まったく飽きることがありません。

ロケット、犬、諦観と愛情。言葉と物語。けっこうどうしようもない主人公たちなのに、憎めない。むしろ愛おしくなるような人物たちでした。

伊藤計劃『屍者の帝国』

ようやっと読み終わった…。「読み終わった」という表現が正しくないような気がする。ただ「終わった」の方が適切のように思う。

伊藤計劃虐殺器官』を読んで、多分にもれず感激しておりました。

がしかし、ちょっとね、いやな予感がしておったのですよ。円城塔氏ですから。もうあれ、なにがなんだかわたしの脳内理解の範疇と速度をガンガンに飛び越えていかれましたね。

円城塔による文章を、わたし以外のひとはどのように読んでいるのか不思議でならない。好きな(というか波長が合う)読者にとっては、比類のない作風であろうとは思います。しかし。しかし分からないよ。

虐殺器官』もSFを舞台にしながら、言葉とその作用についての思索が主だったとは思う。が、本作におけるワトソンやバーナビーをはじめとした、分かりやすくそしてよく動くキャラクターがありながら、それに油断しておりました。

www49.atwiki.jp

ここの感じが自分に一番近くて、少々安心してしまいました。

iPhone 6s Plus 64GB ローズゴールド SIMフリーモデルを買った。

購入

  • 2015-11-12
  • Apple Care+ も追加。
  • Apple Storeオンラインにて。SoftBankの2年契約が残っているため、その間はまだそのSIMを利用。
  • 2年契約が終わったら、MVNOに移行するつもり。

フィルムとカバー

感想

  • でかい。
  • バッテリーがもつ。でかすぎて持ち歩く頻度が下がる→結果としてバッテリー長時間駆動になっている疑惑。
  • まだ5sが動くので家のWi-Fi環境下ではそれを使ったりするが、小柄で軽くてとても快適だと思う。
  • はじめでかいと思った、Nexus5もいまや小柄でデキる子。
  • Kindleで初めて漫画読んだ。話題になってたエヴァンゲリオン。大きい画面はこういう用途に活用したいと思った。

歌野晶午『葉桜の季節に君を想うということ』

葉桜の季節に君を想うということ (文春文庫)

葉桜の季節に君を想うということ (文春文庫)

各種の賞で圧倒的に評価が高かったのは明らかで、有名すぎる作品。

ずっと家にあって、ずっと前に読んだと思い込んでいた。我孫子武丸殺戮にいたる病 (講談社文庫)』と完全に勘違いしていましたね。そちらの方は読んだことがありました。

何を書いてもネタバレになりそうだし、というか先に書名を挙げた時点で反則なのだけれど、Amazonの「この商品を買った人はこんな商品も買っています」に出てしまうんだし、それはもうご愛嬌ということで。

わたしも例外なく「おおっう!」と叫びました。本当に見事な作品。成瀬将虎、麻宮さくら、蓬莱倶楽部。時間と空間を様々に行き来しながら、まるでジェットコースターに乗っているような感覚でした。

ラストはもう言えませんが、これほど「忘れがたい」ラストにはそうそう出会えないでしょう。

最近、道尾秀介さんの『片眼の猿』を読みましたが、そう、この路線が綿々とつながってるんですよね。

わたしは古くは江戸川乱歩、自覚するようになってから宮部みゆきさんが大好きになって、最近は三浦しをんさんのにわかファンですが。こういろんな作者の作品に触れると、「小説」には本当にいろんなものがあるんだなと、今になって知ったような気がします。そのどれもが読者をいろんなかたちで楽しませてくれます。

辻村深月『鍵のない夢を見る』

鍵のない夢を見る

鍵のない夢を見る

夢見る力は、才能なのだ。

夢を見るのは、無条件に正しさを信じることができる者だけに許された特権だ。疑いなく、正しさを信じること。その正しさを自分に強いることだ。

それは水槽の中でしか生きられない、観賞魚のような生き方だ。だけどもう、私にはきれいな水を望むことができない。これから先に手に入れる水はきっと、どんなに微量であっても泥を含んでいる気がした。息が詰まっても、私はそれを飲んで生きていくしか、ない。

それらが全部、私のせいだったらよかったのに。

雄大から、私のせいだと罵られ、責められたかった。人のせいにしないのは、潔いからではない。それは、彼が私に興味を持たず、執着していない証拠なのだ。

『芹葉大学の夢と殺人』についての宮部みゆきさんの選評を読んで、これは読んでおくべきではないかと思っていました。

以前に読んだ辻村深月さんの作品たちとは趣が全然異なる。5つの短編、5人の女性、その日常にある暗さ。

感想を書く前にいくつかレビューを読んでしまったのだけれど、わたしはこの作品すばらしいと思った。つっつけば「大げさ」だとか「誇張しすぎ」とか言えてしまうけれど、それはどの小説にも言えることだろうと思う。あくまで誇張である。というかフィクションである。それなのにそこに「ありそうな」日常があり、洞察があり、輝く一節がある。(上に引用した箇所からは目が離せなかった)

5つの短編の背景には同じような色が見えるのに、泥棒、放火、逃亡者、夢と殺人、誘拐のそのどれもが、終わりには違う色に見えてしまう。トリックや解決があるわけじゃない。救いも希望もあるわけじゃない。なのにラストにはなぜか驚かされてしまうのが、本当に不思議です。

一編目『仁志野町の泥棒』で、失礼ながら「これ、このラストよく書けたな」と撃ちぬかれた。それから繰る手が止まりませんでした。

『ゼロ、ハチ、ゼロ、ナナ。』もそうでしたが、「女」を描くのに卓越していらっしゃる。