道尾秀介『ソロモンの犬』

ソロモンの犬 (文春文庫)

ソロモンの犬 (文春文庫)

プロの「解説」を読んでしまうと、もう何もそれ以上のこと書けないよ症候群。もしくはそれを排しても、道尾作品は「本格」すぎて何を書いてもネタバレになるのではないか病。

作風がとても広いですね。今度は大学生の青春群像と、圧倒的な「間宮未知夫」の存在感。

ウブで真面目な主人公秋内は、とても好感が持てます。間宮未知夫というキャラクターは、そのままシリーズになってもおかしくない。本作は犬とその習性がメインでしたが、鳥でも猫でも細菌でも、別のかたちでもみてみたい。

道尾秀介『片眼の猿』

片眼の猿―One-eyed monkeys (新潮文庫)

片眼の猿―One-eyed monkeys (新潮文庫)

カラスの親指』がよかったので、同作者を。

これも伏線と伏線が津波のように押し寄せつつ、最後のカタルシスたるや。

耳と目あるいはその肉体にまつわる物語。ハードボイルドなのにコミカルで、ガチの「本格」でございます。

ずっとドキドキしながら読めます。「事件」だけでなくて、「探偵役」にまつわるエピソードが追っかけてくるのが疾走感に溢れておりました。

意図的なのかわかりませんが、カラス〜に比べると、「これ伏線!」みたいな表現が多かったように思います。

道尾秀介『カラスの親指』

カラスの親指 by rule of CROW’s thumb

カラスの親指 by rule of CROW’s thumb

感動した。圧倒的に緻密な構成なのに、それを最後まで気付かせない筆力に終始ペテンにかけられて、本当にすがすがしい。

道尾秀介さんは『向日葵の咲かない夏』を読んだことがあって、実は細かい点を覚えていないのですが、なんとなく苦手な意識がありました。正直申し上げてどうしてそんなに評価されているのかわからなかった。が、食わず嫌いはよくないですね。これを読んでまったく印象が変わりました。

あらすじはAmazonに譲るとして、詐欺師の男とその“家族”の物語。読み終わったいまでは、文章のすべてに著者の心血が行き届いていることがわかるけれど、純粋に人物小説としてもおもしろい。悩んだり悔やんだり笑ったりがすごく自然に読めた。

そして最後の最後はもう、言葉もない。というか言えない。

重いテーマなのに痛快で爽やか。とても素敵な小説でした。


2018-10-24 再読。

タケさん、テツさん、まひろ、やひろ、貫太郎。詐欺とマジック。何重もの「騙し」に満ちた圧巻の文章。

箇所箇所思い出せるところはありつつ、2回目でも平気で騙された(めちゃくちゃおもしろかった〉